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■キャッシュフローとは?

(工場の現場)

慢性的な赤字会社は、創業者社長が自らの資産を切り売りし、何とか存続しているというケースが多いのが現実です。そして、工場の現場をみると、仕損(作り損ない)の製品が大量に発生し、あちこちに山積されているものです。

実は、こうした現状が放置されている最大の理由が、“作業ロスは現金と同じ”との理解が不足していることによります。これでは充分な給与やボーナスが支払われないのは当然と言えます。

(銀行頼みの経営)

戦後の日本経済は、いわゆる「護送船団方式」により政府が銀行等の金融機関を保護し、その下で事業会社を育成する、という図式の上で発展してきました。この結果、銀行や信用金庫が企業の財務に深く入り込み、会社の“二つ目の財布”として機能してきました。

当然経営者の目は常に銀行を向き、「赤字決算は銀行の信用が無くなる」と言っては、決算内容をごまかす企業が後を絶ちませんでした。銀行も融資がビジネスの柱であり、低金利政策を背景に、資金を積極的に貸し出しました。

そして、未曾有のバブル崩壊を機にして、企業の資金繰りは悪化し、金融機関を巻き込む倒産が相次ぐという非常事態となったのです。

(土地担保主義の変化)

これまでの銀行による融資は、主に土地を担保にしてきました(土地担保主義)。しかし、バブルは土地価格の上昇によって齎されたため、これが一旦逆周りに大幅な下落に転じると(逆資産効果)、銀行は資金の回収が不可能な事態に至りました。金融システムの不安が大きな政治問題となったのは、つい最近のことなのです。

景気の長引く低迷もあり(「失われた10年」、あるいは15年とも言われている)、融資自体がリスクの高いビジネスであると認識され、会社にとっては「現金を稼ぐ力」が問われることになりました。

この「現金を稼ぐ力」があれば、無担保でも(土地が無くても)融資を受けられる時代になり、言い換えれば、銀行側からは、将来の儲け(キャッシュフロー)を担保として資金を貸し付けるように変化したことになります。

(現金が回ること)

「現金を稼ぐ力」は、事業を行うにあたり当然に追求しなければなりません。しかし、以前は「資金が不足すれば融資に頼る」ことにさして疑問を持たなかったことも事実でした。

決算書で「利益」を計上していても(いい顔を見せる意識も加わって)、「現金」が不足する会社が数多く存在します。「現金」こそが会社の生命線であって、赤字であろうが、債務超過であろうが、現金が回っている限り会社は倒産には至りません。

(財務レバレッジ効果とは?)

典型的な例として、借金で店舗を増やし続けたダイエーと自己資金路線を続けたイトーヨカドーがあげられます。ダイエーは企業としては解体の憂き目に会いましたが、高度成長期やバブル期には短期間で巨大な企業グループに成長したことは事実です。

 

負債利子率より総資産利益率が高ければ(借金の利子より、事業から得られる利益が多ければ)、借金すればするほど利益は増えることになります。借金が会社経営の「てこ」の働きをして利益を増加させることから、「財務レバレッジ効果」と言われました。

 

日本経済の“失われた15年”という長期低迷期間、企業は借金返済に明け暮れました。この間、前述の「キャッシュフロー経営」の思想が改めて注目されてきたという訳です。

   

(万能薬は無い!) 

少し考えてみれば、高成長がいつまでも続くはずのないことは自明です。資本主義経済である限り、経済は大きく変動する。景気の山が高ければ高いほど、落ち込んだ時は深く長く低迷する、からです。

我々はともすると、理論や理屈が絶対的なものと思いがちですが、実は常識とか良識をほんの少し働かせれば、その理論の罠に気が付くことが可能だと思います。

管理会計の世界でも、「財務レバレッジ効果」に対する反省も論じられているようですが、「キャッシュフロー経営」はこれからどう評価されていくでしょうか?

企業にとって、キャッシュフロー経営が万能ではありませんし、成功を約束するものではありません。あくまでも、経営判断のための情報を提供しているに過ぎず、最終的には活用する経営者の都度の判断力に依ることを忘れてはならないのです。

 

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(コストの分類ー続きー)

<操業度による分類> 

生産設備、従業員数、販売体制等経営を行なう能力の利用度を操業度と言い、機械時間、生産量、直接作業時間、売上高等が操業度として用いられます。この操業度の増減に係してどのように変化するかにより、固定費と変動費に区分します。時間と生産量は製造原価に、売上高は販売費や管理費に対して使われます。

 

       固定費・・・操業度(生産高)の増減とは関係なく、総額が変わらないコストで、減価償却費、固定資産税、火災保険料、リース料、不動産賃貸料、役員報酬、支払利息等

 

       変動費・・・操業度(生産高)の増減に比例し変動するコストで、直接材料費、外注費等

 

       準変動費・・・一定の範囲では使用量に関係なく固定費だが、それを超えると使用量に比例して料金が増加するコストで、電気代、水道代等

        準固定費・・・一定の操業度の範囲では固定費だが、それを超えると追加的に人が必要になりコストが増え、再び固定化するもので、作業現場の監督者の賃金、システム開発でのSE(システムエンジニア)の費用等  

<管理可能費と管理不能費>

部門管理責任者はその部門に関わる費用を全て管理できるわけではありません。管理会計では、集計されたコストを管理できるかどうかの観点から、「管理可能費」「管理不能費」に分類します。

その理由としては、次のようなものです。

     権限がない・・・その管理者に権限が与えられなければ責任もない場合で、交際費など部長権限の費用は、部長にとっては管理可能費でも、課長にとっては管理不能費になります。

     短期か長期か・・・企業のインフラに依存するコストは短期的には管理不能で、労務費、建物や機械等の減価償却費、コンピューターや車両等のリース料、固定資産税、支払利息等

 

     管理できるが、しない・・・電話料や工場の電力量は管理できるが、部門ごとに計測器が付いていないという理由から管理しない場合で、事務用品等もこれに当たります。

     他からの配賦・・・他の部門で発生したコストを一部負担する配賦コストがあり、本社費を各事業部で負担する場合等がこれに当たります。管理の範囲が限定的です。この際の配賦処理の仕方はマネジメントにとって重要なポイントとなります。  

<実務上の難しさ>

労務費は管理可能かどうか判断が分かれる科目です。人の採用は製造部長にとって管理不能であっても、人事担当役員にとっては管理可能となります。ところが、残業手当は製造部長には管理可能ですが、リストラによる人員削減となると、取締役会の決定事項となるため、人事担当役員の決済範囲を超えることになります。

このように、「管理可能」と「管理不能」は単純には線を引き難い部分がありますが、管理可能費について管理者を明確にすることが重要になります。

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(コストの分類)

経営管理は、コストを分解・分類することから始まると言えます。管理会計では、経営管理に利用するために、様々な視点から発生したコストを分類します。

 

コストの主な分類方法は次の通りになります。

<形態別分類>

コストを発生形態別に、材料費、労務費、経費に分類 ⇒財務会計で使用

材料費…原材料費、買入部品費等

労務費…賃金、給与、退職金、法定福利金(社会保険負担金)等

経費…減価償却費、賃借料、水道光熱費、旅費交通費等

<機能別分類>

 コストが経営上どのような目的(機能)のために発生したかによる分類 ⇒財務会計との結びつきが強い分類方法

材料費…主要材料費、補助材料費(修理材料費、試験研究材料費)

労務費…直接賃金(加工直接賃金、組立直接賃金)、間接作業費金(営繕作業賃金、保全作業賃金)

経費…動力用電力費・冷暖房用電力費、国内旅費・海外出張費等

 <製品との関連による分類>

 コストの発生が製品に対して直接的に集計できるかどうかの分類で、作業員の作業が、製品に対して直接か間接かは「作業日報」により把握。⇒原価計算に使用

   ・直接材料費…製品を作る際に、部品構成表に登録された直接使われる材料

  ・直接労務費…工場で加工組立作業をする作業者の人件費

  ・直接経費…外注加工費、製品製造のための機械や金型の減価償却費等

  ・製造間接費…間接材料費(洗浄剤等製品に対して直接集計できない材料の消費)、間接労務費 (清掃、打合せ等の人件費)、間接経費(電話代、電気代、事務用品費、賃借料等)

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(コストと費用の違い)

「コスト(原価、cost)」「費用(expense)」は別の概念です。「売上-費用=利益」という会計の基本式によると、“一定期間の売上”から“その期間にかかった費用”を引いた残りが“その期間の利益”ということになります。 

例えば、200個の製品を作っても、その期間での販売数量が150個であれば、150個の売上に対する費用は150個分であり、残りの50個は「在庫」として、資産として計上されます。つまり、製品が販売されたとき、「売上原価」という「費用」になります。また、150個の販売にかかった販売経費やその期間にかかった管理費は全て「費用」になります。 

(※そもそも「原価」とは、製品やサービスを顧客に提供するまでのかかる全ての費用を言い、ここでの「売上原価」は、材料費、加工費用など製品の生産に要する費用である「製造原価」を指し、販売費や一般管理費等会社運営費用までを含めて、「総原価」と言います。 

“一定期間の売上(150個x販売単価)”から“その期間にかかった費用(150個分の売上原価+その他経費<販売経費+管理費>)”を引いた残りが“その期間の利益”ということになります。 

このように「費用」は「損益計算書」に計上され、「在庫」として残った製品は「貸借対照表」に資産として計上され、次期以降の費用として持ち越されるのです。 

売や管理に関わるコストは、発生と同時に全て費用に計上されます。販売経費である営業マンの給与、販売店の賃貸料、広告代、運送代、管理費である本社の賃貸料、経理や人事の人件費などがこれに当たります。これらのコストは売上に係る取引とは明確な因果関係は見出しにくいものの、その期間の売上実現に貢献しているため、発生した期間の費用として計上し、次期以降に繰り越さないことになっています。

 

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■コストとは?

(コストの発生の意味)

前項で、ドラカーの「全ての会社の活動はコストである」を引用しましたが、コストとは、「経済価値の消費」であり、人が働き、設備を動かし、材料を使うことが「コストの発生」に当ります。通常、この経済価値の消費は、「人の働き」であれば「労働時間」、「設備」であれば「稼働時間」、「材料」であれば「消費量」で表すのに対して、会計では、「労務費」「経費」「材料費」として、金額表示で表現し、集計することになります。

 

このように、全ての企業活動が、金額表示によって統一的に表現される反面、諸活動が会計数値に置き換わったとたんに、現場とはかけ離れ、実態が見えにくくなります。本来のコストとは、作業者の動き具合であり、機械の稼働状況であり、材料の消費のされ方が集積されたものです。したがって、会計数値が物量データと連動していなければ、正しい実態を表しているとは言えません。管理会計が経営管理に役立つためには、「業務と会計、つまり、コストの発生源と勘定科目との関係を双方向で結びつける」ことが重要になります。

(コストの発生の把握)

管理会計を行なう場合、現場のデータ「正確」「速く」入手することが大切です。しかし、現場データの収集に際しては、現場担当者・作業者の抵抗がカベになることが少なくありません。

作業時間を把握するためには、「作業日報」を書いてもらう必要がありますが、「手間が掛かる」「作業時間に影響が出る」などの理由から、現場から積極的な協力を得られにくいものです。そのため、就業時間データを使うという考えが代替的に出されますが、就業時間と作業時間は時間の購入と消費の関係であり、代用はできません。就業時間を管理するだけでは、仮に理由の無い残業をしても見つけることはできないからです。

誰しも、自分の業務内容を細かく報告することには後向きになりがちです。こうした現象は、工場だけでなく、販売や開発の現場でも発生しますが、管理会計が機能しない原因の理由の一つとも言われています。現場担当者に協力を得やすい方法を取り入れる必要がありますが、単なる会計レベルを超えた経営管理の視点が求められることになります。いずれにせよ、コスト発生を正確に速く把握し会計に結びつけることが、管理会計導入の成功に繋がる第一歩となります。

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(プロフィットセンター等)

「利益=収益(売上)-費用」の関係から、それぞれの項目を管理する単位が「センター」となります。全社あるいは事業部など「利益責任」を負う単位を「プロフィットセンター」、収益(売上)を集計(「売上責任」)する単位を「レベニューセンター」、工場など「コスト責任」を負う単位を「コストセンター」と呼びます。また事業部の成果を測定するための管理会計の仕組みが「事業部制会計」と言われます。  

 

<レベニューセンター>レベニュー(Revenue)とは「収益」で、「売上高」ともいいますが、商品・サービスの売上、賃貸料(家賃)収入、手数料収入、利息収入などを纏めた概念です。レベニューセンターは、収益責任を持ち、収益(売上)を集計する単位ですが、通常商品・サービスを販売する営業部がこれに当ります。また、営業本部長、営業部長・営業課長、営業マンなど営業部を構成する各層をレベニューセンターとすることもあります。  

 

<コストセンター>製品・サービスのコスト(Cost)を集計し、管理する単位がコストセンターであり、通常、開発部や製造部、管理部などの部門を指します。  

 

<プロフィットセンター>利益に責任を持つ、つまり利益(Profit)を管理する単位をプロフィットセンターと言い、その単位は通常、全社あるいは事業部などになります。 プロフィットセンターは、あくまでも「利益を管理する単位」ですから、規模の大小は問いません。その理由は、全社の最適化を目指す経営の考え方によるからです。

最近では生産ラインや小集団組織を「ミニプロフィットセンター」とする会社も出てきました。京セラの「アメーバ経営」は、小集団グループをプロフィットセンターにした考え方として、よく知られています。工場や物流部門を「利益を生むプロフィットセンター」と位置付ける会社もあります。  

なお、プロフィットセンターが事業部の場合、その成果を測定するための管理会計の仕組みが「事業部制会計」といわれます。(なお、この事業部制を発展させ、さらに大幅に権限委譲された「社内カンパニー制」の下では、キャッシュフローの改善に注目し、全社内での各事業の位置づけを明確にする方法も採用されています。)

※上記の収益・費用に加えて、「投下資本についても責任を負う単位」として、事業部などが「インベストメントセンター」として設定される場合もあります。インベストメントセンターでは、投下資本に対する効率性指標(ROIEVAなど)が適用され、管理されます。

※【小話】

組織の中にプロフィットセンターはないすべては顧客のところにある』(ドラッカー著、『創造する経営者』より)

もともと「プロフィットセンター」という言葉を作ったのは、経営学の巨人ドラッカーですが、彼の真意は冒頭のタイトルにあります。

 

「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない」(ドラッカー名著集『創造する経営者』)


 

ドラッカーは経営の哲学として、あらゆる活動を事業として把握することの必要を強調するためでした。ところが、言葉は独り歩きをして、プロフィットの源泉が組織の中にあるかのごとき錯覚を持たせてしまったようです。彼の真意は、“あらゆる企業活動がまずコストを発生。プロフィットが発生するのは、顧客が代金を払ってくれたときである”というものです。

 「成果は、内部にいる者や、企業の支配下にある者によって決まるのではない。企業の活動が、成果を生むか無駄に終わるかを決定するのは、企業の外部にいる者である」(『創造する経営者』  

さすがに、経営学の巨人の言葉と言うべきですが、管理会計で扱うプロフィットセンターは、あくまでも集計上(管理)の単位であり、目標管理という現実論によるものでしょう。

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(利益の源泉は組織の価値連鎖)

利益とは、事業活動の成果であり、その成果は、特定の活動や部門が生み出すのではなく、購買、生産、販売、物流等の主要な活動とそれを支える開発、人事、経理等の支援活動から生み出されるのです。つまり、会社におけるこれらの諸々の活動が互いに連鎖して新たな価値を生み出していることになります。

※ここで、組織における「価値連鎖」とは、「バリュー・チェーンValue Chain」の訳ですが、この言葉は、マイケル・ポーター (1985) が著書『競争優位の戦略』の中で解説したものです。 ポーターは、文字通り、「企業の諸活動は、連鎖して価値を生み出す」とし、このバリューチェーンの活動を、主活動である購買物流 (inbound logistics)オペレーション製造)、出荷物流 (outbound logistics)マーケティング・販売、サービス、支援活動企業インフラ、人材資源管理、技術開発、調達、により構成されていると説いています。

「購買した原材料等に対して、各プロセスにて価値(バリュー)を付加していくことが企業の主活動である」というコンセプトに基づいたもので、〔売上〕-〔主活動および支援活動のコスト〕=〔利益(マージン)〕のため、図示した場合には、「利益」は「バリュー・チェーン」の最後尾に出口として記載されるものとしています。 

また、ポーターは、主活動の構成要素の効率を上げるか、競合他社との差別化を図ることで、企業の競争優位が確立するとし、企業の諸活動を相互に結び付けることで、市場ニーズに対応することが可能になり、結果として顧客に価値がもたらされる、と考えました。従って、個々のシステムを単独で構築するのではなく、それらを如何に効果的に連結させ、企業全体の効率化や差別化に繋げるかを考える必要があるとしています。

なお、この「バリューチェーン」の考え方は、より包括的かつ広い概念となる、「サプライチェーンマネジメント」に繋がったと考えられています。購買・生産・流通・販売の各サプライチェーンを有機的に組み合わせることで、サプライチェーン全体の効率性を高め、顧客の価値を高める、というものです。

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■ 利益とは?

(利益の源泉は事業)

利益とは、既述のように、「売上と費用の差額概念」ですが、大切なことは、利益を生み出す源泉は事業そのものであることです。従って、経営者は基本に立ちかえり、会社の事業は何で利益を上げて株主等利害関係者の期待に応えていくのか、を考える必要があります。

(事業の定義の見直し)

つまり「事業の定義」を見直すことが重要になります。

古典的な例では、米国の鉄道会社が「鉄道事業」に固執したため、自動車や飛行機に取って代わられましたが、「旅客事業」あるいは「物流事業」に定義し直し、時代の変化に適応すべきであったと言われています。最近の例では、大手コンピューター会社が「ハードウエアビジネス」から「ソリューションビジネス」へ「事業の定義」を変更したり、また、銀行が「預金・貸出事業」から「資産運用サービス事業」等への転換が要請されているなどのことを言います。変化の激しい時代に、経営者は常に「事業の定義」を見直し、利益を上げ続けていかなければなりません。

(事業の選択と経営資源の集中)

経営は「効率」で営まれます。経営者の使命は、限られた経営資源(株主から預託された資金)を出来るだけ効率的に活用し、利益を上げていくことです。会社は幾つかの事業の集積です。非効率な事業は見直し、効率良い収益事業を選択し、資源を集中していくことで、会社利益の最大化(事業の最適化)を図ります。

 

米国のインテルがメモリー半導体から撤退し、パソコン心臓部のUPUに事業分野を転換することで、高収益企業に生まれ変わった事例はあまりに有名です。日本企業では、競争力のある分野に絞込み、高成長を続けているキャノン、得意なキーデバイス技術により“マーケットNo.1”戦略に成功している三洋電機等が知られています。

 この選択と集中の過程において正しい経営判断を下すために、事業の実態を正確に映し出す「管理会計の仕組み」が重要になるのです。

 

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(続き)

<部門責任者の視点>

主要三部門の責任者の視点を確認しましょう。

 

営業部長…営業部長の責任の範囲は、部門全体で売上高計画(予算)及び貢献利益計画(予算)を達成すること、そして売掛金を回収すること、です。営業担当者別の売上や貢献利益、回収期限を越えた売掛金の金額を常に把握しなくてはなりません。このための情報を管理会計はタイムリーに提供します。

 

製造部長(工場長)…製造部長は、生産管理や原価管理の責任者として、採算計算を行いながら、工場全体の効率的運営を考えることが任務です。一般的には、高品質な製品を、納期に従い、出来るだけ安く作ることに注力します。歩留まりが悪く(ロスが多く)、作業時間が長い、納期が守れないことは、原価高に直結します。そのような場合、原因を特定化し、問題点を改善し、採算性向上に努めます。

 

経理部長…原価が高い製品に対しては、「赤字に直結するため、生産を止めるべき」とか「製品在庫金額を売価まで評価減するべき」と考えがちです。これらの議論は、財務会計や税務会計を重視する傾向のある経理部門において容易に起きやすいものです。原価計算や採算計算において、工場経費の配分は実態に即しているか、当該製品の生産の経営的位置づけは何かなど、経理部長には、管理会計に基づく経営者の視点を取り入れた戦略的思考が重要になります。

 

会社が抱える問題の多くは、部門間の対立に起因しているといわれます。個々の部門責任者は、その部門の収益や効率性、つまり部門の最適化を重視しがちです。製品原価が高過ぎるからと、生産を外注し、仕入商品化することが、会社全体の最適化に有益かどうかは容易に判断を下せません。各部門が共有できるモノサシにより諸活動を可視化することを通じて、経営戦略の視点に立ち、部門最適と全体最適を上手にバランスすることが極めて重要になります。

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(管理会計を学ぶ心構え)

管理会計の基本的な役割は、「経営の意思決定に役立つ会計情報の提供」です。したがって、経営者の視点で管理会計を学ぶことが大切です。経営者の視点とは、具体的には社長や部門長(本部長など部門責任者)になったつもりで、考えるということになります。

<社長の視点>

①社長は、売上を増やし、利益を上げることに関心があると考えられますが、その本来の意味は、「事業の継続」、つまり「倒産させないこと」にあります。お金が回ることが重要であり、キャッシュフローを潤沢にしなければ経営の安定は保てません。これは管理会計を学ぶ際の大切な心構えとなります。

 

②社長は、常に「会社の将来をこうしたい」という目標(ビジョン)を定め、それを実現するための計画(中期経営計画)を作り、日々の業務を行います。目標を実現する第一歩が今日の活動です。現時点の確認と目標達成のために管理会計情報が必要となります。

 

③社長は、全社的な視点にたち、全体の利益とキャッシュフローの最大化を目指すことが任務です。部門の最適化ではなく、会社全体の最適化を優先しなければなりません。

  

したがって、管理会計が経営の意思決定に役立つためには、上記のような視点を備えなければなりません。

 

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