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【管理会計が映し出す対象を理解しよう!】

(管理会計が映し出す主要業務)

会社は、一般的に「企画開発」「購買」「生産」「販売」という一連の主要業務からなっています。それぞれの細分化は以下の通りになります。

 

<企画開発>・・・「研究」(新薬、電池自動車等の基礎研究)、「開発」(新商品の設計、生産工程改善等)、「企画設計」(商品の構想から試作品製作等)

このステージでの「コスト管理は、本格的な生産開始後の製品コストに決定的な影響を与え、会社の利益やキャッシュフローを大きく左右する」ことになります。

<購買>・・・「発注」「納品」「検収」「在庫」

購買は、生産に必要な原材料や販売のための商品を仕入れる業務です。製品を製造する場合、設計段階で必要な原料、部品等原材料が決められるので、生産数量さえ決まれば、購買数量は自動的に計算できます(所要量計算)。そして、在庫数を確認し、生産に必要な原材料の不足分を「発注」します。購入した商品や原材料の「納品」段階では、品質と量をチェックする「検収」が行なわれます。納品された商品や原材料は「在庫」として保管され、会社の資産として計上されます。

 

<生産>・・・「生産計画」「製造」「工程管理」「品質管理」

生産は、加工・組立て等の工程を経て、原材料に付加価値を与える一連の活動であり、生産計画、製造、工程管理、品質管理の各業務から成っています。販売計画等から必要な生産数量が決まると、生産管理部門は「生産計画」を作成します。次いで、製造部門において製造作業が始まり、「製造」の流れをスムースにするための「工程管理」がなされます。また、製造作業と平行して、出荷用として所定の品質が満たされているかをチェックする「品質管理」が行なわれます。

 

<販売>・・・「受注」「販売」「回収」

販売は、顧客から注文を受け(「受注」)、商品を引き渡し、同時または後日請求書を送付し(「販売」)、所定の期日までに代金を「回収」するまでの活動です。

  

上記の諸活動が会計を使って表現できるようになったのは、活動基準原価計算(Activity Based Costing)とそれに基づく活動基準管理(Activity Based Management)という考えが登場してからとされています。

ABC「アクティビテイ単位、すなわち業務単位に細かく分類し、その単位のコストを算出すること」

ABMABC(活動基準原価計算)の情報をベースに個別分析し、経営資源の最大限有効に活用する経営管理」

 

近年、管理会計が日本で広がりを見せていますが、アメリカなどで実務的に早くからされていたABCABMは当初あまり話題にされませんでした。

ABC(活動基準原価計算)は、間接業務を具体的な活動のレベルまで分解し、作業者の個々の活動ごとのコストが把握でき、数値による可視化が可能になります。これにより、業務のあり方を根本的に見直すことも可能になるのです。

特に、製造部門では、コスト競争力をつけるため、作業分析が徹底的に行われ、今日の日本の国際競争力の向上に繋がってきたことはよく知られています。日本のホワイトカラーという間接業務は、長年国際的にも非効率、生産性が低いと言われてきましたが、ABM活動基準管理)の導入により、生産性の高い業務分野に変身できる可能性もあるのです。なお、製造部門でも直接作業以外の間接作業が増加しているため、ABCの徹底的な活用の余地があると言えます。

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【実は、管理会計の導入は簡単ではない】

管理会計は、事業の実体である販売活動や生産活動を、収益の観点から「可視化」してくれます。事後的な財務会計の結果を知る前に、予め業績の進捗状況を把握できることが可能になり、問題があった場合、迅速な対策が打てることができるのです。

管理会計を重視する会社は景気の波に左右されにくく、業績の変動が小さい傾向があるようです。しかし、だからといって、既存の管理会計システムを導入さえすれば、業績改善に直ちに繋がるわけではありません。管理会計は、その性質上、企業毎の事業実態に依る部分があるため、役に立つ管理会計とするためには、その企業に実情に合わせた工夫が必要になります。

 

また、何より大切なことは、事業活動の現場は「人」に依っていることを忘れてはなりません。管理会計システムが組織や人事制度と整合したものにならなければ、単なる“尻叩き”の道具に成り果て、社員のやる気を失わせることになりかねません。つまり、管理会計は、組織や人事のあり方、更には企業風土にも影響を及ぼしますし、逆にその導入の成否も現在の制度や風土に影響を受けることになるのです。

 

(管理会計に対する誤解)

①管理会計システムを導入すれば業務は改善できる?

「原価生産システムを作れば原価が下がる」「予算管理をすれば経費を抑えられる」などの思い込みも間違いと言えます。会社経営や部門管理(つまり経営管理)を効果的に行うために、管理会計を導入するものであって、システム対応で自ずと業務改善されるという、効率化のためのシステムではないのです。管理会計は、あくまでも経営判断のための有用な情報を提供することが役割です。(当然ながら、最終的にはその情報を利用する経営者や管理者の判断力が重要なことは言うまでもありません。)

②管理会計と財務会計は連動しなくてもよい?

管理会計と財務会計は実質的に連動していることが重要です。売上高や粗利益を例にとれば、事業別であれ、製品別であれ、それらの総額は損益計算書の金額と同じでなくてはなりません。

最近では、管理会計と財務会計を統合したシステム構築が可能となっています。そこでは、日々の活動結果となる受注、生産、仕入、売上、発注、経費等の基礎データが自動仕分けされ、一方では貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の財務会計に使用され、他方では、部門別時間当り採算表、月次総合表、推移表等の管理会計情報に加工され、経営者や管理者に対して、売上や経費などの実績情報と受注残や在庫などの残高情報が日々報告されます。このような連動性のもとでの正確かつタイムリーな会計情報に基づき経営の意思決定が可能になるわけです。

③管理会計は財務会計数値を加工すること?

管理会計は、伝統的に財務会計の数値を分解、加工すること、という誤解もあるようです。例えば、財務会計上の費用を固定費と変動費に分けて限界利益を計算する、貸借対照表や損益計算書をもとに、流動比率、固定比率等の様々な比率分析を行なう、などです。間違いではありませんが、極めて限定された考えと言うべきです。

上記②のように、本来的には基礎データが日々蓄積され、部門ごとの活動実態に即した経費配分が適切になされ、必要なデータが時系列で管理される必要があります。

 

このように、管理会計には、会計情報の分析を通じ、経営の意思決定に役立てるという機能に加え、経営管理に必要な情報(個別の業務データ)を蓄積するという機能があるのです。

 

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【管理会計がなぜ必要か?】

企業が個人事業から発展して、業務が細分化され、組織が拡大するにつれ、「管理」が必要になります。部門ごとに責任者が配置されるようになれば、社長はそれらの部門長を束ねていかなければなりません。

 

各部門の責任者はそれぞれの部門の成果を最大にすることが一義的な使命であり、そのために頑張ることになります(部分最適)が、それが会社全体にとって望まれるかどうかは分かりません(全体最適)。社長は、会社全体にとって、各部門が効果的に機能するように判断していく必要があります。

 

販売部門と生産部門との間では、納期、仕切価格、在庫責任等の調整が常に問題になりますし、資金を管理する経理部門との間にも軋轢が生じることになりがちです。企業活動は声の大きな部門の言うことが通り易いだけでは、成立ちません。

 

部分最適が全体最適に繋がるよう、社長が業務執行を有効にしていくために「管理会計」が必要になるわけです。「管理会計」により事業活動の可視化が図れるため、情報の共有化が実現し、納得と理解の上に各部門は業務執行に邁進することが可能になります。

このように、「管理会計」は経営者と部門長等の管理者の仕事を支援するものであり、会社の全体最適を図りながら、部分最適を実現するための情報を提供するツールとして不可欠です。

   

なお、全体最適と部分最適の考え方については、「木を見て森を見ず」という諺がありますが、出来る限り「木も見て、森を見る」という認識が大切であり、部分と全体が調和をとれるかが重要になります。つまり、部分と全体の両方が最適化される状況をいかに作り出すかが経営トップの力量ということになり、そのための情報を「管理会計」は提供することになります。

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【財務三表の関係】

   貸借対照表(B/S)
※資金の調達と資金の運用に関する内訳
〔資金の運用(借方)〕〔資金の源泉(貸方)〕

流動資産

  ※2現金・預金流動負債買掛金 
 売掛金 ★短期借入金
 商品 ・・・ 
 ・・・固定負債★長期借入金
   ★社債 
固定資産 建物 ・・・ 
 機械資本※3資本金 
 子会社株式 資本剰余金
 ・・・       ※1利益剰余金
    ・・・ 

                                       

※1損益計算書(P/L)
※利益剰余金の増減内訳
売上高   xxx
売上原価   xxx
売上総利益   xxx
販売管理費   xxx
営業利益   xxx
営業外損益   xxx
経常利益   xxx
特別損益   xxx
当期利益   xxx
(税引前) 

※2キャッシュフロー計算(C/S)
※現金・預金の増減内訳

営業キャッシュフロー   xxx
投資キャッシュフロー   xxx
財務キャッシュフロー   xxx
 純キャッシュフロー   xxx

(参考)
※3株主資本等変動計算書(S/S)
※資本(純資産)の変動状況


(財務三表の基本を理解しよう!)

管理会計であっても、事は会計ですから、「財務諸表(financial statements)」、なかでも基本となる「財務三表」「貸借対照表(balance sheet)」、「損益計算書(profit and loss statement)」、「キャッシュフロー計算書(cashflow statement)」を理解する必要があります。

 

これらは、貸借対照表を中心にして、互いに補完的な関係にあり、貸借対照表の「自己資本」の増減内容を表すのが「損益計算書」「貸借対照表」の「現金預金」の増減内容を表すのが「キャッシュフロー計算表」となっています。

 

なお、一般的に、わが国の会計基準では、財務三表に加え、貸借対照表の純資産の変動状況を表す「株主資本等変動計算書statement of shareholdersequity以前の「利益処分計算書」の代わり)」を基本財務諸表と呼ぶことがあり、副次的な情報としての「営業報告書」、「付属明細書」を合わせて財務諸表としています。

 

  「貸借対照表」資金の調達と資金の運用を示した表)

・・・資産asset、負債liability、資本capitalを一表にまとめ、資金の調達と運用状態を表している。

<資産(借方、debit> 

資金の運用状況を表しており、短期間で現金化する資産である売掛金などの「流動資産current assetsと企業活動の基盤となる建物、機械、土地、特許権、子会社株式などの「固定資産fixed assetsに分かれている。

 <負債、資本(貸方、credit

(負債)資金の調達状況を表しており、「流動負債Current liabilities」には、商品購入代金の未払金、銀行からの短期借入れshort-term debt、「長期負債Long-term liabilities)」1年超の銀行借り入れlong-term debt、社債corporate bondがあります。「他人資本borrowed capitalといいます。(*有利子負債…利子の支払いが必要な負債) 

(資本)株主の払い込んだ「資本金legal capital」と「資本剰余金capital surplus」、過去からの蓄積した「利益剰余金(earned surplus留保利益)」…これらは株主のものであり、「自己資本equity capitalといいます。 

  「損益計算書」業活動における経営成績を示す計算書)

…会社の開発、生産、販売、物流、管理等の一連の事業活動で得られた売上(収益)、そのために費やされた費用、その結果としての損益を一表にまとめたもの。

 <売上salesと利益(損益、profit/loss)勘定の構成>
  売上総利益
gross margin 売上高-売上原価 (粗利益)

    営業利益operating profit… 売上総利益-販売費及び一般管理費 

   経常利益current profit営業利益+営業外収益(預金利息)-営業外費用(借入金利息)        

   税引前当期利益income before tax… 経常利益+特別利益-特別損失(土地・株式の売買損益等)         

   当期利益income after tax… 税引前当期利益-税金(法人税等)(純利益) 

営業利益はその会社の収益力を表わしています。借入金が多い会社は利息支払いが多くなり、結果、経常利益が少なくなります。また、リストラ等で特別な出費を要した場合は、特別損失の計上により当期利益が減少します。

 

最終的に赤字になると、貸借対照表の「利益剰余金」が減り、自己資本が減少します。赤字が続き、資本全体を超えた場合は「債務超過」に陥り、存続が危ぶまれる状態になってしまいます。

 

  「キャッシュフロー計算書」現金等の変動を説明する計算書)

…現金・預金の増減を説明したもので、営業活動、投資活動、財務活動に分けて把握します。それぞれを「営業キャッシュフロー」、「投資キャッシュフロー」、「財務キャッシュフロー」と呼んでいます。(キャッシュフロー計算書は、当期の損益計算書と、貸借対照表の前期比増減を基準に作成します。)

 

企業会計においては、損益は必ずしも現金等の収支と一致しません。損益計算書上では多額の利益があったとしても、現金が不足すれば黒字倒産にならないとも限りません。一方、銀行からの借り入れにより現金は増加しますが、損益計算における収益ではありません。また、減価償却費は損益計算上費用となりますが、同一会計期間における現金支出とは一致しません。

このように、「キャッシュフロー計算表」により、損益計算書とは別の観点から企業の資金状況、企業の現金創出能力と支払い能力を把握するのに役立つとされています。

 

日本でも国際会計基準の流れに沿って、上場企業は20003月期から作成が義務づけられ、「貸借対照表」と「損益計算書」に次ぐ第三の財務諸表として位置付けられています。

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以上の財務三表によって、会社の現状を把握することが出来ますが、あくまでも全体的な理解のためのものです。詳細に分析するためには、管理会計による情報が必要になるのです。

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(小野先生を聴く!)

今回は、単なる「管理会計」ではなく、「経営管理会計」を標榜している、前述の「参考」で取り上げた小野洋祐氏(株式会社ハイブレーンインターナショナル代表)の講演をたまたま聞く機会があったので、その報告をしたいと思います。「管理会計」ではなく、なぜ「経営」を頭に付けるかが理解出来ると思います。

小野先生は、成長する企業とは、まず何より経営者の姿勢と考え方により規定されるとし、持続的な成長を実現できる「近代経営」に目覚めよ!と訴えています。その近代経営への道筋を示してくれるのが経営のための管理会計”、あるいは経営管理のための会計”である「経営管理会計」、つまり、“経営の視点にたった管理会計”というわけです。 実践的な「経営管理会計」を導入することにより、単なる「会計情報」の枠を超えて、人事評価や組織のあるべき姿を映し出してくれる。社員が尻たたきされるだけの会計情報ではなく、社員のやる気に火をつけ、組織を目覚めさせることが可能になるとしています。

以下に要旨を掲げますので、是非その真髄を感じてみてください。標語的なフレーズに潜む真の意味を理解していくことが必要と思われます。

テーマ:「日本の企業再生『成長支援』の原点を考える」~金儲け成長願望から経営トップ(COO)への変身~

①「『企業経営者』には簡単になれない」…「中小企業経営者群」「商売人群」「事業経営者」は多いが、「企業経営者」は希少である。『経営トップの姿勢と変身なくして、企業の成長なし』

②「経営とは芸術であり、経営は科学である」…『勘と経験と度胸の限界から、先進経済の経営の論理に目覚める』ことから始まる。

③「『企業の形態』の進化と『経営体制』の向上」…「家業」はベースであり、「実業」はスタート、そして「近代経営」は継続経営の原点である。「生業家業」「実業経営」「近代経営」の段階が存在する。

④「事業、ビジネスモデルの変遷の中に、企業の永続性はある」…「事業」は、"市場競争力"、「企業」は"業界競争力"である。ここで、基本的に「人事と労務」の思想と仕組みなくして企業の成長はない。経営の主要人材は長期継続的雇用体系であるべき。変動費ではない。

「経営体を創る『経営管理会計制度』とその運用」・・・経営管理会計が人材を育て、事業を峻別する。組織問題、制度問題は経営管理会計で見ていくべき。経営管理会計は、組織的に独立採算制を導入し、そこに組織別に権限を委譲し、組織的に自由な母体を作っていく。

「経営管理会計」「四つの実践論」から成っている。まず、経営戦略の視点に立った「企業経営管理会計」というべき、企業全体の経営管理会計の勘定体系と計算体系であり、次いで事業に落とし込んだ「事業経営管理会計」、営業部門における「営業管理会計」、さらには製造工程や営業マンレベルに関与する「業務管理会計」の四段階から構成される。

現在、学んでいる管理会計の基礎の向こうには、わくわくするような実践的な応用の世界が広がっていることを感じさせてくれるのではないでしょうか。

ご参考までに、以下に小野先生の著書を掲載しておきます。

 

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(利益とは?)

企業とは伝統的に“利潤を追求する”と言われ、会社の事業活動の基本を一般的な算式で表すと、〔売上(収益)-費用=利益〕となります。

これを財務会計では、一定期間(月、年)における、売上(収益)と費用の差額を意味しています。そして、下記のように、この売上と費用の計上方法には複数のルールがあり、導き出される数字も異なるため、当然、利益もまた複数になります。

 <売上基準>

     商品を出荷した時点での「出荷基準」、商品を納入した時点での「納品基準」、得意先による検収の時点での「検収基準」など

特に、決算日をまたいだ場合には、どちらの基準を採るかで売上が変わり、その結果当期の利益が異なってきます。また、ソフトウエア開発会社などで、発注元が納品されたソフトウエアを納得し、検収した時点で売上計上する場合があります。

 

(※なお、“未上場企業で、税務会計を中心にしている会社では、売上を請求書を発行した時点で計上する場合が見受けられるようですが、「請求書発行基準」なるものはありません”。)

 <費用計上基準>     減価償却計算における「定額法」「定率法」など

ここで重要な点は、費用の額の算定には、業種の事情や企業の主観が入り込むということであり、その見積もりの仕方によっては、利益も異なってきます。例えば、貸倒引当金、返品調整引当金など。

       

また、日米においても、それぞれの会計基準が部分的に異なっているため、同じ会社が日本(東京証券取引所)と米国(ニューヨーク証券取引所)で上場している場合、それぞれの財務諸表における利益が異なってきます。

 

上記のように、売上や費用の計上基準には、幾つかの選択肢がありますが、会社の事業形態等を加味して、最も適した計上基準を選択することになります。その場合、そのときどきの状況に合わせ、採用した基準を頻繁に変更することは、「継続性の原則」の点から望ましい姿ではありません。

 

また、財務会計のルールは、企業会計審議会により経済環境の変化に合わせ、しばしばルール変更がなされますので、留意が必要です。

 

管理会計上の利益測定に関しては、会社内部の問題となるため、法律や制度の影響は受けません。例えば、アパレル企業において製品在庫が残った場合、来期の販売高の測定ルールとして、「一律、原価を3割で評価する」などを採用することはかまいません。

また、何年も前に作った製品の標準原価を使って、在庫金額や利益を算定することは経営上望ましいものではなく、管理会計のルールは常に見直す必要があります。

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(参考)

※ 財務会計管理会計の違いについて、株式会社ハイブレーン・インターナショナル代表の小野洋祐氏は、著書『超本社』(ダイヤモンド社)の中で、実践的な視点から、次のように明確に整理しています(P192194)。氏はその本質性から、単なる「管理会計」ではなく、「経営管理会計」と呼んでいますが、ここでは、「管理会計」と置き換えても何ら問題はありません。

 〔財務会計〕

    目的…会社を取り巻く利害関係者に企業の経営成績と財務状態を報告すること。

    狙い…会社と利害関係者の投資、回収、債権債務関係の利害調整資料を提供すること。

    基準…企業会計原則、商法、税法をベースとして合原則的・合法的であること。

    対象…会社とその会計記録と報告書。

    期間…一年一回、事後計算的である。

 〔経営管理会計〕

目的…企業を経営する経営者ならびに管理者に、企業を適正に経営する資料を提供すること。

狙い…企業の収益性・生産性の向上ならびに財務の健全性と安全性を追求すること。

    基準…企業の業種、業態、規模ならびに症状に対応した計算基準を合目的につくること。

    対象…企業の収益性・生産性の向上の目的に合わせて、独自の対象を考えていく。工場別、営業所別、事業所別、または、商品群別、得意先別、地域別等々。

    期間…期初、毎月度末、年度末の全過程の計算比較である。

 

そして、次のように簡略に特徴付けをしています。

財務会計…対外的、利害調整的、合原則的、合法的、会社対象かつ年度計算

経営管理会計…体内的、収益性・財務性の向上、合目的、企業の管理対象中心かつ過程計算

 

また、それぞれの会計を扱う責任者(財務部長経営管理室長)を引いて、思考特性に根本的な違いがあることを説明しています。

〔財務部長〕

   ハード(定型的思考)   ロジカル(論理的思考)   パーシャル(部分的思考)   コンサバチィブ(保守的思考)  

〔経営管理室長〕

   ソフト&ハード(柔軟的思考かつ規範的思考)   ロジカル&エモーション(論理的思考かつ情緒的思考)  システム&パーシャル(体系的・重点的思考と具体的実践的思考)   ラジカル&コンサバチィブ(革新的かつ保守的思考)

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(どう違う?)

「財務会計」は、通常よく目にする、会社の決算書類(損益計算書、貸借対照表、付属明細書等)を作成し、利害関係人にその内容を報告することを目的にしています。なかでも、株主と債権者は企業活動に不可欠な資金を提供していますから、彼らに対して会計情報を提供することは社会的な要請でもあります。

 

アメリカでは、19世紀終わりから20世紀にかけ資本主義の発展に伴って企業規模が拡大するにつれ、銀行からの借り入れや社債の発行により資金調達finance)を行うようになりました。その際、資金の出し手側(銀行や投資家)が元利金の返済の確実性を判断するための資料(貸借対照表や損益計算書)の提出を会社側に要求しました。財務会計はこの過程で大いに発展したとされています。また、資金の貸し手と借り手の利害を調整するために、「会計基準」が設けられるようになりました。

 

我が国においては、財務会計のうち、会社法や金融商品取引法の規定に基づいて行われる会計を「制度会計」と呼んで区別しています。

 

これに対して、「管理会計」は、法律とは関係なく、会社経営の意思決定のために有用な会計情報を提供するための会計で、伝統的には主として、原価計算(Costing予算管理(Budgetingと考えられていました。最近では幅広く、会社における組織内部の活動や戦略と関連付けられるようになり、「計画(planning」と「統制(control」という用語が当てられています。つまり、“計画(予算)と実際の事業活動の間に差が生じた場合、進むべき道に調整すること(統制)が必要”になります。そのためには、“会社活動の実態をすばやく的確に把握するためには、管理会計が不可欠”なのです。こうした事情から、管理会計は会社毎に異なることが通常です。

 

会社経営は、単純化すると、「lan→Doheck」のサイクルを繰り返しながら事業活動を行っています。この中で「財務会計」は事業活動結果(Do)のCheck段階で行われるのに対し、「管理会計」はPlan段階で用いられるという違いがあります。

これを言い換えれば、財務会計はこれまでの活動の結果を分析対象とすることから「過去会計」、一方、管理会計はこれからの経営の意思決定に役立てるための分析を対象にすることから「未来会計」、とも言われています。また、管理会計は、経営トップだけでなく、現場レベル、事業部長レベル、本部長レベルの意思決定に活用できる実務的なツールでもあります。

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(会計の役割は?)

「会計」を使うことによって、国や業種を問わず、零細企業から大企業まで、その規模や活動の複雑さに拘らず、企業の活動状況を「貨幣価値」で表せることができ、その実態を一目で見ることができるようになります。

 

「利益」という尺度で、会社の財務状態(儲けの具合)、つまり赤字や黒字の程度を測ることができ、経営の実態や成績を把握することができるのです。加えて、会計処理が一定のルール(会計基準)に基づけば、国を超えてあらゆる会社の活動状況を同じ尺度で比較することが可能になります。

 

     財務会計と管理会計の違い

(体系は?)

普通の会社(主として営利企業)において適用される会計は「企業会計」(accounting for business enterprises)と言われています。企業会計は、その目的から、財務会計」と管理会計」に区分けできます。なお、財務会計には、法体系の関連から「制度会計」と呼ばれる「会社法による会計」、「金融商品取引法による会計」、「法人税法による会計」があり、それぞれに関係する法律に則った方式が義務付けられています。

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